2009年06月15日

(社)日本アイソトープ協会 滝沢研究所見学会

岩手県の滝沢村にある滝沢研究所は、全国の病院など日本で発生するすべての医療アイソトープ(RI;放射性同位元素)廃棄物の国内唯一の処理施設のほか、サイクロトロン(*)を用いた核医学施設を有し、医療RIの廃棄物処理の流れに加え、製造や利用研究についても学ぶことのできる施設です。 廃棄物処理施設「茅記念滝沢研究所」では、全国の約1,500もの医療機関から集めた固体廃棄物を焼却やプレスで減容した後、処理済み廃棄物体として保管しています。廃棄物の約8割は可燃物(紙類、布類等)と難燃物(注射器などのプラスチック製品やゴム・ポリ製品)で、現在は、年間に50L容器1万本の廃棄物を焼却処理により200L容器数10本に減容しているとのことでした(減容率は1/150)。廃棄物に含まれる核種の半減期は短く、見学には特段の防護も必要ありませんが、燃焼にともなう排ガスを複数のフィルターで浄化してから屋外へ排出したり、測定器を設けて施設周辺の放射線量をモニタリングするなど、周辺環境へ影響を与えないよう細心の注意が払われていました。 「仁科記念サイクロトロンセンター」では、超小型サイクロトロンで製造したRIを同じ建物内にあるPET/CT装置に用いて、脳疾患や悪性腫瘍等の検査・診断や研究を行っています。検査には、人体に欠かせない炭素、窒素、水素といった元素のRIが用いられますが、半減期が炭素-11で20分、酸素-15でわずか2分と極めて短いため、検査施設の近くで製造することが肝心とのことでした。 また隣接する岩手医科大学の「超高磁場MRI研究施設」には、アリの腸管まで見えるという高性能MRIがあり、主に脳疾患の術前・術後評価等に活用されています。撮影画像は平面だけでなく、3Dでも確認できるため、頭のどの方向から進むと最小限のリスクで腫瘍に到達できるか、といった情報も事前に手術担当医に伝えることができるとのことでした。 (写真下)処理前廃棄物容器(50L)。医療用は塗装が緑色。